天理教では、人間の心に生じる「ほこり」を反省し、払い続けることが親神様の思召に適う生活への道だと教えられています。「ほこり」とは親神様の思召に沿わない自己中心的な心遣いのことで、吹けば飛ぶような些細なものですが、放置すれば積もり重なり、やがて心が曇り、生活に障りとして現れるのです。
心のほこりとは何か?
天理教では、心の状態や行動が自分中心の勝手な心遣いになっているとき、それを「ほこり」にたとえられます。心のほこりは最初は些細なものですが、気づかないうちに積み重なり、ついには元通りにきれいにはならないほど染み込んでしまいます。
「ほこりは吹けば飛ぶような些細なものですが、油断をしているといつの間にか積もり重なり、ついにはちょっとやそっとではきれいにならないものです。」
心遣いは個々の自由として「我がの理(わがのことわり)」が許されていますが、親神様の思召に適わない心を遣っていると、やがて心は曇り濁ってしまい、親神様のご守護を悟れなくなると教えられています。結果として、生活に身上の障りや事情のもつれとして現れるのです。
天理教の八つのほこり
天理教の八つのほこりと具体例
心のほこり | 意味 | 具体例 |
---|---|---|
をしい(惜しみ) | 自分の力や物を使うのを嫌がり、他人に任せて楽をしようとする心。 | 1. 借りた物を返すのが面倒で放置する。 2. 難しい仕事や嫌な仕事を他人に押し付け、自分は楽をする。 3. 税金を出し惜しむ。 |
ほしい(欲しい) | 今あるものに満足せず、もっと欲しがる心。努力をせずに求める態度。 | 1. 他人が持っている物や地位を羨ましがる。 2. 努力をせず、楽をしてお金や結果を手に入れたいと願う。 3. すでに物があるのに、さらに物を欲しがる。 |
にくい(憎い) | 自分が気に入らないことや人を許せず、憎んでしまう心。 | 1. 助言や忠告をされた時、逆に反発してその人を憎む。 2. 家族や友人との喧嘩で、相手を許さずずっと怒っている。 3. 自分のミスを他人のせいにして、相手を恨む。 |
かわい(可愛) | 自分や身近な人のことだけを考え、他人への配慮が欠ける心。 | 1. 子供が間違ったことをしても注意せず、甘やかす。 2. 自分や家族のことだけ優先して、他人の気持ちを無視する。 3. 好きな人には親切にするが、そうでない人には冷たく接する。 |
うらみ(恨み) | 自分が悪いことを反省せず、他人を責めて恨む心。 | 1. 他人が成功したことをねたみ、恨む。 2. 計画がうまくいかなかったことを他人のせいにして怒る。 3. 過去の小さなトラブルをいつまでも忘れず、根に持つ。 |
はらだち(腹立ち) | ちょっとしたことで怒りやすく、感情的になる心。 | 1. 自分の思い通りにいかないと、すぐに腹を立てる。 2. 他人の言動が気に入らず、感情的になって怒る。 3. 自分の意見を押し通し、相手の意見を聞こうとしない。 |
よく(欲) | 必要以上に物を欲しがったり、不正な手段で利益を得ようとする心。 | 1. 他人の物を盗んだり、不正をして得ようとする。 2. 自分のためにお金や物を独り占めして、分け与えない。 3. 男女関係に溺れ、周りを困らせる。 |
こうまん(高慢) | 自分を偉いと思い込み、他人を見下す心。 | 1. 知識や立場を鼻にかけて他人を馬鹿にする。 2. 他人の意見を軽く見て、自分だけが正しいと思い込む。 3. できないことをできるふりをして、自分を大きく見せる。 |
八つのほこりのポイント
天理教では、この「八つのほこり」は日常生活の中で無意識に生じやすいと教えられています。小さなことでも反省せず放っておくと、心が曇り、やがて生活に悩みや苦しみとして現れることがあります。
日々の中で自分の行動や心を振り返り、気づいた「ほこり」を少しずつ払っていくことで、心は澄み渡り、明るい毎日を送ることができるのです。
「うそ」と「ついしょう」も嫌われます
八つのほこりに加え、天理教では「うそ」と「ついしょう(追従)」も心の曇りを生むものとして注意するよう教えられています。
- うそ:自分の都合を優先し、事実を偽る心。
例:失敗を隠すために嘘をつく、他人を欺く。 - ついしょう:心にもない言葉で人に媚びること。
例:自分の利益のためにお世辞を言い、相手を操作しようとする。
心のほこりを払う方法
教祖は、親神様の教えを「箒(ほうき)」として、心を掃除し続けることが大切だと教えています。心のほこりを払うための具体的な方法は次の通りです。
- 心の点検
自分の心遣いを振り返り、「八つのほこり」や「うそ」「ついしょう」を使っていないか考える。 - 反省と改め
気づいたほこりを認め、親神様の思召に沿った心遣いへと改める努力をする。 - おつとめ
天理教における「おつとめ」とは、親神様への感謝を表し、心を清める行いです。
おつとめをすることで、薄皮をはぐように、ほこりがはがれていきます。
日々のおつとめを通じて、自分の心を澄まし、ほこりを払うようにしましょう。
日々の心の掃除で明るい生活を
心のほこりは、小さなことから積もり始めます。最初は気づかなくても、放っておくと心が曇り、生活に悩みや苦しみが現れることもあります。だからこそ、毎日の心の掃除が大切です。
天理教では、「心が清らかであれば、毎日が楽しいものになる」と教えられています。心をすきやかに保ち、親神様の守護をいただきながら、明るく穏やかな日々を過ごしましょう。
脚注
- 親神様(おやがみさま):天理教におけるすべての人間の親であり、守護し導く神様。
- おつとめ:親神様への感謝と心の清めを目的として行う儀式。
- 思召(おぼしめし):親神様の願いや導きのこと。
- ご守護(ごしゅご):親神様が私たちの生活や健康を守り、導いてくださること。