天理教におけるお金の考え方と運営資金の使途
お金の考え方
天理教では、全てのものが神様からの「かしもの・かりもの」(貸し物・借り物)であり、金銭も神様からお借りしているものとされています。この思想に基づき、感謝の心を持ち、真心からお金を扱うことが教えられています。以下のような形で金銭が関わる信仰活動が行われます。
お布施(お供え)
天理教では、信者が感謝の気持ちを表すために、金銭や物品を神様に捧げる「お供え」を行います。
- 用途:教会の運営、祭典の開催、施設の維持などに使用。
- 金額:決められておらず、「自分の気持ちに応じて」というスタンスが一般的です。
- 重要性:真心からの感謝の行為として、信者の信仰心を深める役割があります。
上納金
天理教の組織構造上、末端の教会から上位の教会、さらに本部に対して「上納金」が送られる仕組みがあります。
- 用途:教団全体の運営費や活動資金として使用されます。
- 仕組み:一定の割合や金額が決められている場合があり、教会単位で納められます。
- 透明性:各教会で運営費と上納金をどのように管理・運用するかが問われることがあります。
寄付・献金
信者に対する寄付や献金の呼びかけは、特定のプロジェクトや行事に関連して行われます。
- 事例:大規模建設プロジェクト「おやさとやかた」や、記念行事の運営。
- 信者の役割:自主的な献金として、信仰の一環とされています。
- 使途:施設の建設費用や維持管理費、記念事業の資金など。
世情働き
「世情働き」とは、信者が天理教を支えるために行う奉仕活動の総称です。
- 内容:教会の清掃、祭典の準備、農作業、地域社会への貢献活動。
- 金銭的要素:広義には金銭的な寄付も「世情働き」の一部とみなされます。
- 目的:信者が信仰心を実際の行動で表現し、教団や地域社会を支える役割を果たします。
運営資金の使途
天理教では、信者から寄せられるお布施や寄付が運営資金となり、以下の目的で使用されます:
- 教会の維持・運営
- 教会施設の維持・修繕。
- 教会長や職員の生活費(光熱費や食費など)。
- 祭典や行事の運営費。
- 布教活動
- 国内外での布教活動の推進。
- 宣教者の育成・派遣にかかる費用。
- 社会貢献活動
- 地域社会への貢献(災害支援や福祉活動)。
- 教育機関(天理大学や天理高校など)の運営。
- 医療機関(天理よろづ相談所病院)の維持・発展。
- 本部の維持・運営
- 天理市の天理教本部の施設運営費や維持費。
- 信者が集う場としての機能を維持するための投資。
お金に関する特徴と課題
- お金は信仰を支える重要な要素であるが、あくまで神様への感謝と信仰活動を持続するための手段と位置づけられています。
- 寄付やお布施は強制されるものではなく、信者の自主性に委ねられています。
- ただし、運営の透明性や一部の負担感については、地域や教会ごとに差がある場合があります。
天理教における体験談とお金の教え
教会長さんや天理で聞いた話
働いている人とお供え
ある時、こんな話を聞いたことがあります。
「働いている人が教会の月次祭に出られない場合、その1日分の働きのお給料の1割をお供えしてみてはどうでしょう」と教えられることがあるそうです。
これは、「教会行事の1日分のお給料を感謝として神様にお供えする」という提案です。ただし、これは決まりではなく、その人の誠真実が一番大切だということ。形だけのお供えではなく、心を込めた感謝が伴わなければ意味がないという考え方です。
大教会長さんから聞いた話
親神様のお働きに感謝する
「私たちは、親神様のお働きによって毎日生かされています」と教えられました。
たとえば、寝ている間も心臓が動いたり、食べ物が自然と消化されたりするのは、自分の意思ではなく親神様の働きのおかげです。こうした体の機能をお借りしていることに感謝するべきだ、という教えです。
- 具体例
「1日100円でもいいから、親神様に“この体を貸してくれてありがとう”と感謝しながらお供えをする。それを毎日続けると1カ月で3,000円になります。その3,000円を月次祭などで教会や本部にお供えするといいですよ」とのことでした。 - 心が大事
大教会長さんは、「1カ月分をまとめて3,000円をお供えする人と、毎日感謝しながら100円ずつ積み重ねてお供えする人、親神様はどちらを喜ばれるでしょうか?」と問いかけられました。要は、お供えの金額ではなく、日々の感謝の心が何より大切だということです。
困ったときのお供え
お供えは心を清めるための手段
生活が思うようにいかないときや、病気などで悩んでいるとき、「お供えをしてみましょう」と言われることがあります。
これは、お金に執着や欲が絡むことで心に溜まった“ほこり”を清めるためです。お供えを通して、自分の心を見つめ直し、親神様に感謝することで、良い方向に向かうと考えられています。
お金と心について
お金の教え
天理教では、「お金は命の次に大事なもの」と教えられています。欲望や執着が心にほこりを生じさせ、結果的に困難な状況を招くこともあると考えられています。自分の分を超えた欲望が、後々身上(病気)や事情(生活の困難)として現れることもあるそうです。
生きたお金の使い方
人を助けるために使うことが大切です。
本当に困っている人を支える行為は親神様が喜ばれることとされています。
反対に、必要以上に与えたり、自分の徳分を超えて浪費することはかえって悪い結果を招く場合もあると教えられています。
信者さん同士の話の中での気づき
お供えと助かること
「お供えをたくさんすれば助かる」という考え方について話し合ったことがあります。
- 多い少ないは関係ない
「もしお供えの金額だけで助かるなら、お金持ちしか助からない世の中になってしまいます」と話しました。お供えの多さが大事なのではなく、お供えに込めた心が重要だという考えです。 - おたすけが大切
お供えも大切ですが、人を助ける「おたすけ」の行いこそが助かるための近道だと考えられています。 - 親神様は心を見ている
親神様が見ているのは、金額や形式ではなく、その人の感謝の心や気持ちです。
まとめ
これらの体験談やお話は、天理教におけるお供えやお金に対する考え方を深く知るための貴重な学びです。
- お供えの本質:金額や形式ではなく、心を込めた感謝の行為が大切です。
- 困ったときの指針:お供えを通して心を清め、感謝を見つめ直すことで新たな道が開けることがあります。
- お金の使い方:お金を正しく使い、自分や他人の幸せのために役立てる生きた使い方を心がけることが求められます。
最終的に、親神様が何より大切にしているのは「その人の真実の心」であることを忘れず、日々の信仰生活に取り組んでいくことが大切です。